おっさんの野望 #知力18-19

【人はなぜエセ科学に騙されるのか[上][下]】
[著:カール・セーガン][訳:青木 薫]

▼どんな本?

まず著者であるカール・セーガンさんについて、簡単に説明。
アメリカ人の天文学者。(1934年生~1996年没)
特に宇宙開発関連で多大な足跡を残しており、
パイオニア、ボイジャー、バイキング等の宇宙探査機の
計画企画にも携わっていました。
有名なパイオニアが運んだ、異星人に向けたメッセージを刻んだ
金属板は、この人が発案したと言われています。
つまり・・・
地球外生命体に対して否定的では無いどころか、
どちらかと言えば、ソレを期待していた側のガチ科学者が
書いた本になります。(ココ大事デス)

ちなみに読んでから知ったのですが、この本の原題は
The demon-haunted world(悪魔に取り憑かれた世界
に対して最初の邦題が「科学と悪霊を語る」
あーなるほど、そういうことか・・・。

▼読み所は?

この本は、著者の遺作とまで言われているのですが、
没年から解るとおり、本自体は1990年代に書かれています。
当然、当時から科学自体は驚くべき発展を遂げており
特に技術面から見れば、文字通り完全に時代遅れと言えるでしょう。
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具体的に言うと、当時の携帯電話はまだアナログ機。
映像は、なんとVHSテープで録画していました。
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ですが、この本では技術云々には触れておらず、
どの時代でも通用するような切り口となっています。

著者は似非科学を、当時のアメリカで話題になっていた
宇宙人やUFO。そして歴史的な観点から宗教
(特に中世に行われた魔女狩り動乱)等をサンプル
として取り上げて説明しています。
※宗教のサンプルの中には、なんと日本で発生した
 オウム真理教の話題も含まれていました。
 時代的にあの事件はドンピシャだったんでしょうね。

特に宇宙人やUFOに関しては、著者ご本人の専門分野が
天文学と言う事も有り、かなり掘り下げて記載されており
「あれ?俺は今宇宙人本読んでいるんだっけ?」
と錯覚するくらい、かなりのページが割かれています。
当然、科学の観点でそれらの情報は否定をしています。
ただし、一方的な決めつけの否定ではなく、著者本人が
誰よりも異星人の存在を期待してるからこそ、
誤った情報は流布させたくない、と言う思いが
随所で感じられました。

では、我々はどうやって科学と似非科学を切り分けるべきなのか?
と言うことですが、この本では親切に切り分けツールを
用意してくれています。
書内で紹介されているのは9つあるのですが、流石に多いので
(数が多すぎると逆に意識出来なくなるので)
特に大事そうなのをピックアップして記載してみます。

  1. 裏付けを取る:
    相手が出してきた話に対して、独立した裏付けを取るようにすること。
  2. 議論のまな板に載せる:
    相手が出してきた話に対して、様々な観点を持つ人達に見てもらい、
    しっかり議論すること。
  3. 権威主義に陥るな:
    権威ある人や組織の発言だからと鵜呑みにしないこと。
  4. オッカムの剃刀の利用:
    相手が出してきた話に対して、検証・仮説・反証を行う場合
    仮説が複数あるならば、よりシンプルな方を選ぶこと。

たった4つですが、これらを意識するだけでも、似非科学に
巻き込まれないようにする効果は結構あると思います。
(似非科学だけじゃなく、詐欺とかにも効果ありそう)

ちなみに、上記3つに共通するのは「懐疑的思考」を
行うための道具ということです。
この本では繰返し「懐疑的」になることを勧めています。
もちろん、相手からの話は1から10まで問答無用で突っぱねろ、
と言っている訳では無く、「本当にそうか?」と
しっかり自分で考えろ、と言っているのです。
(一旦受け止めて自分の中で反証を練る)

ただし「疑う」には多少の知識が必要になるのも事実です。
そこで常日頃から「興味を持って」科学知識を吸収
していく事も大事ですよ、とこの本では述べています。

似非科学は、聞き手にとって非常に刺激的で、そして何より肯定的な
(要は聞き手にとって都合の良い)話が大多数です。

そしてこれが、頭の善し悪しを問わず、似非科学に魅了される人が
尽きない原因だと思われます。

▼最後に

上記でも述べたとおり、この本は時代に影響されない内容を
持っています。

いや、自分の予想だとむしろ、これからの時代の方が
遙かに危険で、これらの知識(特に似非科学判定ツール)は
結構重要になってくると思っています。

何故、これからの時代の方が危険かというと、
似非科学は「現代の明るみになった科学」と
「その人が持っている科学的知識」の隙間に忍び込んで来る
ものではないか?と察したからです。
両者の隙間が狭ければ(最低限の知識があれば)、
忍び込もうとする似非科学に対して多少なりとも違和感を感じ
状況に応じて拒絶もできましょう。
ですが、この隙間が広ければ、似非科学に入り込まれているのに
気付くことすら出来ない。
下手をするとそちらが真実だとすら錯覚してしまいます。

科学は人類が何千年と築き上げてきた知恵と技術の結晶です。
それに対して、中途半端に上辺だけで知った気になった程度の
理解で立ち向かうのは、似非科学にとって鴨葱レベルの
上お得意様と言えるでしょう。
よく、子供が言う、「なんで勉強しなければならないの?」と
言う問いの答えの一つはこれなのかな?と思います。

最後の最後に、これからの(自分にとって)特に怖い
キーワードは「量子力学」。コレです。
何が怖いかと言うと、自分が理解していないのは
当然として、事象がどーも直感に反しているんですよね。
それなのに、既に色々なサイトや動画配信でも
物理学や熱力学はもちろん、哲学もギリ解るとして
心理学などのメンタルヘルス、スピリチュアル系にまで
このワードが盛り込まれつつある有様。
投稿者、配信者が意図的に騙そうとしているのか
それとも本気なのか・・・。

最後の最後の最後に、裏読み過ぎかもしれませんが、
著者からの「この本自体、漫然と信じるなよ?」という
戒め・教訓(・挑発?)を感じ取りました。
考えすぎかもしれませんが・・・ね。

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