【できそこない博物館】(星新一)

▼どんな本?
いつもの星新一さんのショートショート短編集かと思ったのですが
星新一さんが普段どんな事を考えて、どんな方法で作品を執筆しているかを
本人自ら赤裸々に綴ったエッセイ(と言うより自虐本?)でした。
※この本のタイトル「できそこない博物館」ってそういうことか。と
途中で気付きました(笑)
元はどこかの出版社の企画モノらしいですね。
こんなこと書いてくれる作家さんってあまり居ないのでは?と思っていたので
星新一さんの立場と出版当時の時代背景も合せて、中々新鮮な内容でした。
▼読み所は?
この本を読むと、あの「ショートショートの神様」と謳われた星さんですら
作品を「捻り出して」作っていたんだな、と認識させられます。
捻り出し方の基本はご自身が何かにつけて出力していたアイディアのメモで、
この本はそのメモを中心に進んでいきます。
(この本では触れていませんでしたが、かなりのメモ魔だったようで
これは何となくイメージ通りですね)
で、自分が書いたメモに対してダメ出ししたり、膨らませたり冷静に深掘り
したりと、まるで鑑定士のようなスタンスで臨みます。
アイディアメモの元になっているのは、テレビや新聞、映画はもちろん
落語なんかにも手を伸ばしているように見受けられます。
星さんの作品はどこか落語臭いのがあるよな、と感じたのはそういう所
だったんだな、と妙に納得しました。
また、以外だったのは他の作家さんの作品もかなり読み込んでいると言うこと。
自分だったら他人の作風に影響を受けそうなので、出来れば避けたいですし
何より自分の創作時間が削られてしまうよなー、と考えてしまいます。
また感銘を受けたのが星新一さんのポリシー。・捻りすぎない。(捻りすぎると、初めて読む読者さんが困る)
・大変なのはシチュエーション。ストーリーは何とかなる。
・時事風俗や流行は書かない。
・SFは実現しそうで決して実現しないものであるべき。
他にも細々と作中にちりばめられていましたが、流石プロだな。
と感じました。
とは言え、これが出版されたのは昭和の末期(昭和60年)で
あの頃は「どうやっても実現させるんだよ」と言う絵空事が、
今は実現しているのもあるんですよね。
例えば生成AIなんてのは、その最たるもの。
星さんのメモに「写真をもとに、有名画家風の絵を描く装置」
なんてのが。今は実現できちゃってるんよね・・・。
今、星新一さんが今の技術を見たらどんなリアクションするんだろう。
「もうSFなんて書けんわ」ってなるのか、更に創作意欲が滾るのか。
※星新一さんは1997年に亡くなられています。
▼最後に
前回前々回と色々考えさせられる内容だったので、ちょっと頭を空っぽに出来る
楽しい本を読もうとコレを選択したのですが、中々どうして、
プロの作家さんの本業の取り組み方や、星新一さんという好きな作家さんの考えや
ポリシー、苦悩などが垣間見られて、コレはコレで興味深い作品でした。
ただ、いきなり本作品を読むのは絶対に避けるべきで、星新一さんの作品を
最低でも3、4冊。出来れば新旧5冊以上履修してから読むべき。
そうすればさらにニヤリと出来るハズです。
上記でもちょっと触れましたが、星新一さんが活動したのは主に昭和の末期です。
つまり今から大体40~50年前。
短編かつSFが主戦場でありながら、今読んでも色褪せないどころか
十分面白い中にも時折ハッとさせられる作風なのは、筋の通ったポリシーが
あったからこそなんだな、と再確認しました。


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