【「普通」につけるくすり】[著:岸見 一郎]

▼どんな本?
まずは著者の岸見一郎さんについて、簡単に説明します。
心理学、哲学の学者さんで、特にアドラー心理学(注)を専門と
されており、日本アドラー心理学会の顧問とのことです。
岸見さんは、本もかなり出しており(恥ずかしながら全然知らなかったのですが)
あの大ベストセラー「嫌われる勇気」もこの方(と共著者の古賀史健さん)の
作品でした。
「今注目の~」とか「あのXXが~」とか尾ひれ背ひれが付くと、敬遠するケがあるので
そういう意味では色眼鏡無しでこの本を読むことができて幸いでした。
さて、タイトル「「普通」につけるくすり」ですが、
ありきたりに考えると、「普通」ではない、逸脱した人を
戒めるための注意喚起のような内容になるのかと思うのですが
このタイトルは見事にその逆を突いてきており
それが私の興味をそそった、とゆー訳でした。
注:アドラー(アルフレッド・アドラー)についての予備知識
心理学を少しでも囓ったことがある人ならご存じのハズ。
現代心理学を語る上で絶対に避けて通れないオーストラリアの精神科医です。
「個人心理学(アドラー心理学)」を創始した人として知られています。
▼読み所は?
初っ端からですが、この本の流れをかなり乱暴に要約すると・・・
・あなたは特別な人間じゃないし、特別になる必要も無い。
・普通とは「皆と同じ」という意味ではない。
・他の人と比べてはいけない、また競争してもいけない。
・自分を受け入れ、自分に出来ることを丁寧にこなすこと。
・自分のために学び、学んだもので他者に貢献すること。
と読めました。(私の独断偏見です)
これは、読者が「自分は普通ではない、自分は特別である」
のような自意識を持っていようがいまいが、一旦それをリセット
させて身軽な状態で、著者の岸見さんが考える生き方を伝授される。
という仕組みになっています。(もちろん私の独断偏見です)
さて、一般的に言われるところの「普通」ですが
現代では「普通」は「周りと一緒」「平凡」として扱われ、
しばしばネガティブに扱われることが多いように思われます。
で、著者の岸見さんが導く「普通」とは(一部上でも書きましたが)
・皆と同じと言うことではない。
・同じであってはいけないが、特別になる必要は無い。
としており、つまり
「他の誰とも違う自分として生きること」
であると述べています。
と言うことで、この本はこの「他の誰とも違う自分として生きる」
方法が書かれた本になります。
では、その方法とは何なのか?ですが、この本では
「競争しないこと」を大原則としています。
なぜ競争してはいけないか。
→ 普通でありたくないと思う人は、どうしても特別になろうとする。
→ その時に他人と「競争」が始まってしまう。
→ 競争をしていくと、自分のことしか考えられなくなり、他の人に協力する姿勢が無くなる。
と述べています。(他にも多数例示されています)
競争と言えば、社会人の出世レース、みたいなことを連想するかも
しれませんが、学生同士ももちろん、さらに本書では親子、きょうだいの
間ですら(本人達は意図していない)競争が発生していると述べています。
またここでは「褒める・褒められる」事も競争に繋がりかねないので
その弊害も知っておくべき、としています。
このように、我々は幼い頃から無意識に競争が刷り込まれているので
競争から降りるのは非常に勇気が要る行為であり、
そもそも競争からの降り方すら解らない人も居るかも知れません。
もちろん、この本ではその方法も記されています。
そして競争から降りることが出来たら、他人からの評価は気にせず
自分のために学ぶべきだとしています。
→ この本では「非競争」を徹底しており、学びの中でも競争するべきでは無い。
競争は学びの過程を楽しむことが出来ない、としています。
そして最後に、学びで得た力は自分のためではなく他人に貢献せよ、
で締めくくられています。
▼最後に
この本では「特別である必要は無い」のフレーズや、アドラーの
著書の引用など、同じような内容が何回も何回も登場します。
どうも説法を聞かされているような感じになりますが、裏返すと
著者はそれだけ信念と自信を持って書いているとも言えます。
この本は、岸見さんのほぼ最新作にあたるのですが、
これまでの本の集大成に近い内容になっているのではないでしょうか?
(恥ずかしながら他の本を読んだこと無いので、勝手な想像ですが)
そんな岸見さんの長年のノウハウが詰まったこの本ですが、
私的には、この世の承認欲求マン全員に読んで欲しいのですが
教育者(または会社の上司)のような人に物を教える立場になった方。
あとはSNSに疲れた方なんかには特に染みるのではないかと思います。
色々書きましたが、この本を読んで素朴な疑問がありまして・・・。
この本で繰り返される「比べること、競争することの弊害」自体は
私も十二分に理解したつもりで、否定する気はありませんが
組織同士の比較・競争については記載がありませんでした。
これに関しては功罪が両極端(メーカ同士の切磋琢磨による技術革新から
国同士の文字通りの戦争)なので、判断が非常に難しい、と感じたわけです。
特に組織のトップの人達なんて、競争を続けた結果にその地位に
居るはずなので、その人達が「競争」を手放すとなると・・・。
どんな世の中になってしまうんでしょうね。ちょっと想像が出来ません
ただ、この本の締めは自分で得た知識は他人のために使え
とあるので、意外と良い具合に機能するのかな?
これに関しては、著者の岸見さんに直接伺ってみたいですね。


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