【ダンゴムシに心はあるのか】[著:森山 徹]

▼どんな本?
まずは著者の森山さんについて、簡単に説明します。
現在は大学の准教授で、専門は比較心理学や動物行動学など
ずっと「心」に関する事を研究されている模様です。
この本のタイトルだと一見「ダンゴムシありき」に読めてしまう
かもしれませんが、実際は著者が研究している「心とはなんぞや?」の
考えをダンゴムシを通して開示する本である、と言えるでしょうか。
じゃあダンゴムシ成分はどこから・・・?となりますが、
ダンゴムシは「たまたま」検体が豊富に入手出来たので、選ばれただけ。
・・・と言うのも大きな理由のひとつですが、他にも
「身体が小さいので実験装置が作りやすい」等があったそうです。
さらに、身体の構造(特に神経系)がシンプルなので、このような
生き物でも心がある事を示したい、というモチベーションもあったでしょう。
ちなみに、ダンゴムシについての簡単な概要(予備知識)です。
名前の由来となり、一番よく知られているのは「触ると丸まる」動作でしょう。
ムシと呼ばれていますが、昆虫ではなく、甲殻類に属します。
仲間としてはワラジムシやフナムシ、あとはちょっと昔流行った
ダイオウグソクムシなんかも含まれます。
脳はある事はあるらしいのですが、あくまで神経中枢に過ぎず
人間で言う大脳に当たる部分は無いとのこと。
また、突き当たりにぶつかる度に右→左→右→左・・・と交互に曲がる
「交替性転向反応」と呼ばれる習性も有名です。
▼読み所は?
タイトルにもなっている「ダンゴムシに心はあるか?」ですが、
わざわざこんな本出すくらいだから、なんかありそうですよね。(笑)
と言うか、そもそも「心」ってなんなんですかね?
ご存知の通り、心は見たり聞いたりと五感で感じ取ることは出来ません。
(少なくとも私はそう思っています)
実は、「一般的に」心とは感情を司る脳(主に大脳)がその役割を
担っている、と考えられているそうです。
もちろん、これはあくまでの一般論で、学問分野や学者によって
解釈が異なっているようです。
立場によって多少解釈が異なるのは仕方が無いかもしれません。
が、先に「心」の定義を決めておかないと、最後のページで突然
「これでダンゴムシの心があると証明出来ました。Q.E.D.」
とか書かれても、何のこっちゃ??になりますよね。
そこで、著者の森山さんは最初に「心」についての定義を定める事から
始めます。
ちなみに、著者は必ずしも「心=脳」で説明出来るとは主張していません。
(※前述の通り、ダンゴムシには大脳にあたる部位は無い)
著者が考える「心(日常的な心)」をざっくりと要約すると・・・。
例えば、大事な打合せの場にA社社員が遅刻したとします。
相手のB社社員は、ビジネスマナーに厳しい人。
それを知っているA社の社員は開口一番謝罪します。
「“心から”お詫び申し上げます!」
A社員は「心から」と言いましたが、この時A社員は同時に
(スマホでゲームの続きしてぇ)とか(オナラ出そう・・・)などと
思い巡らしているかもしれません。
当然、A社員はこの場でスマホを見たりオナラを出すことは流石にしません。
さてこの時、B社社員は、A社員の
「心からお詫び申し上げます」は聞いて(聴覚)認知する事が
出来ますが、A社員が考えている(スマホ見たい)や(オナラ出そう)に
ついては、五感ではまず気付けないでしょう。
それは、A社員がその行動を抑制し、表に出さないようにしたからです。
著者の森山さんは、その抑制された行動こそが「内なるわたくしの行動」
すなわち「(日常的な)心の概念」の正体である、としています。
本書では、ここからさらに一段、二段掘り下げた説明に入るのですが
既にざっくりレベルを超えた説明の長さになってしまっているので割愛。
つまり、著者の森山さんは、ダンゴムシが一見何気なくゴソゴソ動いている
その動作の裏にも「抑制された何か」=「心の概念」があるのではないか?と
思いついた訳です。
思いついた訳です・・・と言ったモノの、じゃあどうやってそれを
証明するんだよ?ってなりますよね、ふつー。
なにしろダンゴムシは喋りませんし、意思疎通も出来ません。
ではどうするか?
著者の森山さんは、まず徹底的に「ダンゴムシの普通(既知の行動)」を
見極めることにしました。
例えば人間であれば「大きな音がしたら、音の方に注意を向ける」
のような感じでしょうか。
ダンゴムシで言えば、冒頭で説明した「つつくと丸まる」や
「交替性転向反応」もこれに該当します。
ダンゴムシの「普通」が確認出来たら、次はダンゴムシに対して
「未知の状況」を遭遇させます。
(例えば今まで物理壁だったものが水たまりに変わる、等)
ここで取るダンゴムシの行動が「普通(想定通り)」なのか。
それとも想定外の行動を取るのか、を見極める事になるのですが
もし後者だった場合、ダンゴムシにはその行動を取った何かしらの
「理由」があったはずです。
その「理由」を考察し、そしてそれを証明するための次の実験に移ります。
これを続けていくことで、最終的に「ダンゴムシの心」すなわち
「抑制されていた行動」を顕在化させることが出来ると言う訳です。
▼最後に
ではまとめです。
え・・・? いやいや心があったかどうかの結果を教えろよ!
と言われそうですが、そこは実際にこの本を読んで確かめてみて欲しいです。
本当は書き残したいことが山程あり、あれこれ書いていたのですが
やはり長過ぎになってしまい、これでもだいぶ削りまくりました。
特に「ダンゴムシの普通」を見極める件だけでも、1冊本が出せる
レベルになっています。
(実際、著者はこの実験で国際会議の場で発表しています)
そして私が特に印象に残ったのも「結果」ではなく、そこに至るまでの
道筋の推論と段取りの方法でした。
(内容が冗長になるので、ここについても丸々カットしたのですが)
いわば前提となる「ダンゴムシの普通」を知るための試行錯誤が
「研究者しているな~」と感心しきり。
恐らく著者は本に書けなかった実験も相当数やっているのでしょう。
数多の学者や研究者は、こうやって1の成果を得るために何百、何千の
下積みや証拠固めをしているハズで、それだけでも頭が下がるのですが
何よりも「何故これを証明するために、この実験が必要なのか?」を
論理的に打ち出せる力が凄いと言わざるを得ません。
こういうのってどうやって鍛えるんでしょうかね?
・・・って、そんなの(鍛え方)無いから、数々の未証明問題が
まだ残っているんでしょうね。(セルフ解決)
あー、研究者になりたかったなぁ。


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